<論文紹介> 骨折部位で生じるイオン勾配を利用したドラッグデリバリー (ACIE・VIP)

Angewandte Chemie International Edition薬物を患部にピンポイントで効率よく届けるドラッグデリバリー(薬物送達)の重要性が広く認識されるようになり、さまざまなアプローチが研究されています。その新しい試みとして、骨折部位で発生するイオン勾配を利用して治療薬を送り込む方法が、ペンシルバニア大学とボストン大学の共同研究グループによってAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告されました。

 ⇒ Yadav, V., Freedman, J. D., Grinstaff, M. and Sen, A. (2013), Bone-Crack Detection, Targeting, and Repair Using Ion Gradients . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201305759
(本文を読むにはアクセス権が必要です)

bone cracking骨折部位では、骨の内部にあったミネラル成分ヒドロキシアパタイトが体液に接して加水分解を起こし、イオンが放出されます。その周囲で発生したイオン勾配によって、負電荷を帯びたナノ粒子が引き寄せられる働きを利用して、薬物を患部に運搬するという仕組みです。

ひびを入れた骨試料を使った実験では、骨粗しょう症の治療薬アレンドロン酸ナトリウムを封入した生分解性ポリマーPLGAのナノ粒子に負電荷を与えたところ、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中を移動して骨折部位に集まることが確認されました。ドラッグデリバリーの新しいアプローチとして、今後の展開が期待されます。

■ この論文は、ACIEで二人の査読者が特に重要性を認めた注目論文VIP (Very Important Paper)に選ばれました。
 ⇒ VIP: Bone-Crack Detection, Targeting, and Repair Using Ion Gradients

カテゴリー: 論文 パーマリンク