材料科学のニュースサイトMaterials Viewsに掲載された、ちょっと面白い記事をご紹介します。材料科学の分野で、密度がきわめて小さい「超軽量材料」の研究が近年進み、最軽量記録が次々に更新されています。現在の世界記録は、中国・浙江大学のグループが今年2月にAdvanced Materials誌で報告した炭素材料カーボン・エアロゲルで、その密度は 0.16 mg/cm3と、常圧の空気の密度の約1/6しかありません。
木が水に浮かび、ヘリウム風船が空に浮かぶように、密度がより小さい物体が浮くことは誰でも知っています。では、この「空気より軽い」カーボン・エアロゲルは、空気中でぷかぷか浮かぶのか、あるいは手を離れた風船のように空に飛んでいくのかというと、実はそんなことは起こりません。その理由が以下の記事で説明されています。
⇒ Why Can’t Ultralight Materials Fly? (September 18, 2013, Materials Views)
リンク先の記事の写真にあるように、カーボン・エアロゲルは草の穂先のような柔らかいもので支えることができますが、全く支えがなければ下に落ちてしまいます。これはカーボン・エアロゲルが無数の微細な穴をもつ多孔性物質であるためで、空気中に置かれると穴から中に空気が入り込みます。空気を含んだ状態(素材+空気)では、同じ体積の空気よりわずかに重くなるので、浮くことはありません。0.16 mg/cm3といった密度は、空気を含まない状態で測定されたものだというのが、直感的には気付きにくいところです。この記事の著者は、専門外の人が誤解しないよう、超軽量材料に対しては「密度」を尺度に使うのを避けるよう提唱しています。