しなやかで丈夫なクモの糸、垂直な壁もスイスイ登れるヤモリの足裏など、自然界の生物の器官にヒントを得てそれを人工的に再現しようとする「生物模倣技術」(バイオミメティクス、バイオインスピレーション)が注目され、さまざまな材料開発に応用されています。このほどAdvanced Functional Materials誌から、この生物模倣技術とナノ科学の融合による新材料の研究開発をテーマとする特集号”New Materials through Bioinspiration and Nanoscience”が発行されました。(Volume 23, Issue 36: September 25, 2013)
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- 共同客員編集長を務めたハーバード大学Joanna Aizenberg教授・マックスプランク界面コロイド研究所Peter Fratzl理事によるEditorial: New Materials through Bioinspiration and Nanoscience(無料公開)
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生物器官の高度な機能を実現するカギが、材料が生み出す複雑な微細構造(例えばヤモリの足裏の繊毛)にあることが、これまでの研究で明らかになってきました。とりわけ近年は、ナノ科学・ナノテクの進歩によってナノスケールの構造を解明・実現することが可能になり、研究の急速な進展につながっています。今回の特集号では、クモの糸(スパイダーシルク)などの繊維状タンパク質、骨や歯・甲殻類の殻などの成分であるキチン、ミクロ構造が不均一な複合材料の設計などの主題が取り上げられています。また、解明されたナノ構造を実現するための3Dプリンティング技術や、細胞組織工学への応用、アクチュエータ開発への応用(山梨大学・奥崎 秀典准教授らによる「湿度変化に反応する折り紙アクチュエータ」に関する論文など)についても論じられます。本号は、こういった主題に関する19報の原著論文および総説を収録しています。