京都大学化学研究所・山子 茂教授を中心とする研究グループは、シクロパラフェニレン(CPP)がC70フラーレンを包接する際のサイズ・配向選択性を実験的・理論的に解明しました。この成果を報告した論文はChemistry - A European Journalに掲載され、同誌の注目論文VIP (Very Important Paper)に選ばれました。
- 論文 ⇒ Iwamoto, T., Watanabe, Y., Takaya, H., Haino, T., Yasuda, N. and Yamago, S. (2013), Size- and Orientation-Selective Encapsulation of C70 by Cycloparaphenylenes. Chem. Eur. J., 19: 14061–14068. doi: 10.1002/chem.201302694 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
CPPはベンゼンを環状につないだ分子で、カーボンナノチューブ(CNT)の最小構成単位となっています。このCPPは、内部にフラーレンを包接して、最短の「フラーレンピーポッド」を作ることができます。山子教授らは、先行する研究でCPPと球状のC60フラーレンの相互作用を調べ、ベンゼン単位が10個である[10]CPPのみが選択的にC60フラーレンを包摂するというサイズ選択性を明らかにしていました。(参考リンク)
今回の論文で山子教授らは、細長いラグビーボール型のC70フラーレンとCPPの包接関係を調べました。その結果、C70フラーレンは、さまざまなサイズのCPPのうち、ベンゼンが10個の[10]CPPと11個の[11]CPPのみによって選択的に包接されることが分かりました。さらに理論計算と単結晶X線構造解析によって、[10]CPPの内部でC70フラーレンは長軸がCPPと平行な”Lying”の配向を取り、一方[11]CPP内では長軸がCPPに対して垂直な”Standing”の配向を取ることが確認されました。論文では、それぞれの構造における相互作用について詳細な検討が行われました。CPP・フラーレン間のπ−π相互作用の理解を深めるとともに、材料の設計・合成への応用が期待できる成果として注目されます。
■ この成果は、化学ニュースサイトChemistry Viewsでも紹介されました。
⇒ Carbon Peapods (October 15, 2013, Chemistry Views)
■ Chem. Eur. J.では、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
⇒ 最近VIPに選ばれた論文