化学者カール・ジェラッシ氏が90歳を迎える|世界初の経口避妊薬(ピル)の開発をはじめ多数の業績

candle経口避妊薬(ピル)の開発者として知られる化学者カール・ジェラッシ氏 (Carl Djerassi, 1923-) が、昨日(10月29日)90歳の誕生日を迎えました。化学ニュースサイトChemistry Viewsが特集記事を掲載しています。

1923年にオーストリアのウィーンで生まれたジェラッシ氏は、米ウィスコンシン大学でPh.Dを取得後、CIBA社を経て、1949年にSyntex社のAssociate Directorに就任しました。ここでジェラッシ氏は、共同研究者とともに世界で初めてとなる経口避妊薬の基礎成分ノルエチンドロンの開発に成功しました。

oxygenその後、Syntex社での研究開発と大学での研究を両立させる道を選んだジェラッシ氏は、ウェイン州立大学を経て1959年にスタンフォード大学教授となり(現在は名誉教授)、天然物化学を中心に、分子構造解析、人工知能(AI)の有機化学への応用などの分野で論文1,200報以上を発表しました。また1968年にはZoecon社を起業し、昆虫の成長ホルモンを使った害虫防除法の開発に取り組みました。さらにジェラッシ氏は、こういった研究活動の傍ら、SF小説や戯曲、詩などの作品を発表するという多才ぶりを発揮しました。科学を主題にした戯曲の一作“Oxygen” (右に表紙画像) は、1981年ノーベル化学賞受賞者ロアルド・ホフマンとの共作とのことです。

昨日の誕生日にあたって、独フランクフルト大学はジェラッシ氏に名誉博士号を贈りました。既に多数の大学から名誉博士号を受けているジェラッシ氏ですが、生涯を通じての業績に対して名誉博士号が授与されるのは今回が初めてです。こういった名誉博士号に加えて、権威あるウルフ賞化学部門(1978年、同賞第一回の受賞)、プリーストリー・メダル(1992年)など輝かしい受賞歴を持つジェラッシ氏は、2005年に母国オーストリアで記念切手の顔にまでなったそうです。

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