北海道大学大学院工学研究院の伊藤 肇教授、関 朋宏特任助教らは、機械的刺激によって発光性が変わる「発光性メカノクロミズム」という性質を持つ金錯体において、金原子間結合の切断を伴う単結晶-単結晶(SCSC)相転移を発見しました。その成果をAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告した論文は、同誌の注目論文 VIP (Very Important Paper)に選ばれました。
- 論文 ⇒ Seki, T., Sakurada, K. and Ito, H. (2013), Controlling Mechano- and Seeding-Triggered Single-Crystal-to-Single-Crystal Phase Transition: Molecular Domino with a Disconnection of Aurophilic Bonds. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201307672
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伊藤教授らは最近、発光性メカノクロミズムを示す有機化合物フェニルフェニルイソシアニド金錯体を用いて、外部からの微小な機械的刺激をトリガーとして、刺激を受けた場所から周囲へと「ドミノ倒し」的に分子構造の変化が増幅されて伝搬する、興味深いSCSC相転移現象を報告しました。この相転移においては、金原子間結合が形成される際に発光の赤色シフトが見られたのに対し、今回の論文で伊藤教授らは、フェニルフェニルイソシアニド金錯体に2つのメチル基を導入した金錯体で起こるSCSC相転移では、外部刺激によって前回とは逆に金原子間結合が切断され、それに伴って鮮やかな緑色から弱い青色へと発光性が変わることを報告しました。今回新たな種類のSCSC相転移が発見されたことで、今後この相転移現象のメカニズムの解明が一層進むことが期待されます。
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
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