独立行政法人農業生物資源研究所(生物研)を中心とする共同研究グループの「遺伝子組換えカイコによる蛍光色シルク」についての論文の画像が、同論文が掲載されたAdvanced Functional Materials誌最新号のInside Front Cover(内表紙)に採用されました。(右画像)
- 論文 ⇒ Iizuka, T., Sezutsu, H., Tatematsu, K.-i., Kobayashi, I., Yonemura, N., Uchino, K., Nakajima, K., Kojima, K., Takabayashi, C., Machii, H., Yamada, K., Kurihara, H., Asakura, T., Nakazawa, Y., Miyawaki, A., Karasawa, S., Kobayashi, H., Yamaguchi, J., Kuwabara, N., Nakamura, T., Yoshii, K. and Tamura, T. (2013), Colored Fluorescent Silk Made by Transgenic Silkworms. Adv. Funct. Mater., 23: 5232–5239. doi: 10.1002/adfm.201300365 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
生物研は、2000年に世界で初めてカイコの遺伝子組換え技術の開発に成功、その技術を利用して新規な高機能シルク(絹糸)の研究開発を幅広く進めています。今回の論文が取り上げているのは、その一環として開発された、蛍光タンパク質を導入した遺伝子組換えカイコが作り出す蛍光色シルクで、これまでに緑・赤・オレンジの3色のシルクの生産に成功しています。これらのシルクは、自然光の下では淡い色ですが、特定の波長の光を当てると鮮やかな色の蛍光を示します。それを使って試作されたウェディングドレスの写真が右上の画像です。
遺伝子組換えカイコが蛍光色シルクを作り出す性質は、次世代に引き継がれることが確認されています。同グループはこれまでに、遺伝子組換えカイコを2万匹以上という大規模で飼育するのと並行して、繭を煮て絹糸を繰る際に高温により蛍光タンパク質が変質するのを防ぐため、従来の方法よりも低温で糸を取り出す繰糸方法を開発しました。今回の論文で同グループは、採用された遺伝子組換え技術や飼育・繰糸方法を報告するとともに、蛍光色シルクの強度などの性質を分析し、蛍光シルクは通常のシルクよりわずかに強度が劣るが実用に十分であることを確認しました。同じ技術を使って多様な発色・蛍光を示すシルクの開発が可能と考えられ、今後服飾生地や医用材料への応用が期待されます。