オープンアクセス(OA)での論文出版には、信頼できる投稿先をお選び下さい|おなじみのWileyジャーナルも選択肢になります

多くの方がご存知の通り、学術出版の分野で近年、雑誌論文を誰でも閲覧できるように無償でオンライン公開するオープンアクセス(OA) の潮流が世界的に高まっています。自分の研究成果を広く発信したい研究者側からのニーズに加えて、特に欧米では、公的助成を受けた研究の成果を「パブリックアクセス」を通じて国民に還元すべきとの見地から、そういった助成金つきの研究から生まれた論文のOA化を義務付ける動きが進んでいます。(参考: 英国研究会議(RCUK)、助成研究成果のオープンアクセス化に対する助成プログラムの詳細を発表| 2012年11月12日・カレントアウェアネス・ポータル)

warningその一方で、近ごろ問題視されるようになっているのは、OA出版のための費用負担として著者から支払われる Article Publication Charge (= APC, 論文出版料金)を目当てに、適切な査読手続きを欠くなど質の低いOA誌を発行する出版社の増加です。悪質な出版社をまとめたブラックリストBeall’s Listが公開されているほか、最近では、Science誌のライターが、明らかな科学的誤りをわざと随所に入れたニセ論文をOA誌に投稿する「おとり実験」を行ったところ、投稿先の304誌のうち実に157誌からアクセプトされたという報告が大きな話題となりました。

 参考リンク  

今年5月にWileyが実施した調査では、OA出版の経験を持つ論文著者の多くが、OAでの投稿先を決める上での判断基準として、周囲の研究者からの評価、高いインパクトファクター、出版物のクオリティの高さ、厳格な査読(ピアレビュー)といったポイントを挙げました。この結果は、OA誌にも従来のジャーナルと変わらず質の高さや信頼性を求める著者が多いことを示しています。実際、上記の「おとり実験」に引っかからず、ニセ論文をリジェクトした良質なOA出版社も少なくありません。今後OA誌への投稿をお考えになる著者の方は、上記のBeall’s Listや周囲の評判などを参考に、投稿先が信頼のおける出版社・ジャーナルかどうか十分に確かめることをおすすめします。

さて、OA出版ではPLoS (Public Library of Science) に代表されるOA専門の新しい出版社が注目されることが多いですが、Wileyをはじめ、これまで年間購読ベースのジャーナルを発行してきた学術出版社もまた、OA化への対応を進めています。これから論文のOA出版を検討する方のために、WileyのOAへの取り組みを例としてご紹介します。

 1. Wiley Open Access  → 詳しく見る

すべての掲載論文をOAで公開する「フルOA誌」の出版プログラムです。現在約30誌が対象となっています。欧州各国化学会の連合体ChemPubSoc EuropeのChemistryOpen、EMBO(欧州分子生物学機構)のEMBO Molecular Medicine、日本癌学会のCancer Science (OA化は2014年から)、アジア糖尿病学会のJournal of Diabetes Investigation (同)など、権威ある学協会による高インパクト誌が多く含まれ、いずれも厳格な査読を行う信頼できるジャーナルです。

Wiley Open Access論文投稿時に、アクセプトされた場合はAPCを支払うことに同意をいただき、アクセプトが決まった時点で実際にAPCをお支払いいただきます。発行元の学会が会員向けの割引料金を設定しているジャーナルもあります。各誌のAPC料金表はこちら

 2. OnlineOpen  → 詳しく見る

従来型の年間購読ベースのジャーナルの中で、著者がAPCを負担することにより自分の論文を選択的にOA公開するオプションです。(「ハイブリッドOA」と呼ばれます) Wileyのジャーナル約1,500誌のうち、Angewandte Chemie, Advanced Materialsなどを含む大半の約1,300誌でOnlineOpenオプションを選べます。(各ジャーナルホームページの画面左のメニューに、OnlineOpenの項目があります) 

論文がアクセプトされた時点で、OnlineOpenを選ぶかどうかを著者に決めていただきます。著者がOnlineOpen Order Formを提出しAPCを支払うと、その論文がOAで公開されます。APCは、ほとんどのジャーナルで一論文につきUS$3,000となっています。(一部例外あり)

※ 一部のジャーナルでは、OnlineOpenによるOA論文の増加に伴い、アクセスに有料購読を必要とする非OA論文の出版点数が前年を下回る状況が生まれています。そのような場合に年間購読料金とAPCによる収入の「二重取り」を避けるため、Wileyはジャーナルごとに各年のOA・非OA論文の出版点数をカウントし、非OA論文が減ったジャーナルではその割合に応じて翌年の購読料金を調整する方針を採用しました。詳しくはこちらのページをご覧下さい。

 3. OA論文での著者の権利など 

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  • APCの支払い方法は、クレジットカード・銀行振込・小切手から選べます。論文著者自身のほか、所属機関や研究助成機関が代わって支払うこともできます。
  • 論文の著作権は著者が保有し、Wileyに対して出版の許諾をいただきます。
  • 論文は、Wiley Online LibraryでOA公開されます。OAのジャーナルや論文は、icon_openアイコンで示されます。
  • 出版された正式なPDFを、研究室や著者個人のウェブサイト、所属機関のサーバー、その他公的なサーバーなどで直ちに公開することができます。
  • 著者は、公開時のライセンスとして、クリエイティブ・コモンズのCC BY(著作権者表示)、CC BY NC(表示-非営利)または CC BY NC ND(表示-非営利-改変禁止)ライセンスのいずれかを選べます。(一部のジャーナルで例外あり)

その他詳しくは、上記1, 2のリンク先サイトのFAQでご確認下さい。

 4. 途上国向けプログラム 

worldAPCの支払いが困難な途上国の研究者が、OAの普及によって論文出版の機会を失うことがないよう、WileyはAPCの免除または50%減額の制度を設けています。 → 対象国

また、OAの意義のひとつとして、学術誌の購読が経済的に難しい途上国が論文にアクセスできるようにすることもしばしば挙げられますが、Wileyをはじめとする学術出版社は、OA化の動きが高まる前から既にこの課題に取り組んできました。Wileyは途上国からの科学技術情報へのアクセスを支援する官民連携プログラムResearch4Lifeに創設時から参加し、OA以外のジャーナル・論文のほとんどについても、同プログラムを通じて途上国に無償または低価格でのアクセスを提供しています。 → Developing World Access

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