理化学研究所・科学技術振興機構・九州大学による共同研究グループは、クロスカップリング反応で触媒に用いるパラジウムの量を従来の数万分の1にまで削減できる高効率な「シリコンナノワイヤーアレイ担持パラジウム触媒」の開発に成功し、その成果をAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告しました。
- 発表資料 従来の数万分の1の触媒量で機能するパラジウム触媒を開発 -大規模な化学プラントでも実用可能な触媒へ- (2013年11月15日・理研ほか)
- 論文 ⇒ Yamada, Y. M. A., Yuyama, Y., Sato, T., Fujikawa, S. and Uozumi, Y. (2013), A Palladium-Nanoparticle and Silicon-Nanowire-Array Hybrid: A Platform for Catalytic Heterogeneous Reactions. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201308541 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
*2013/11/28追記: この論文はACIEの注目論文「Hot Paper」に選ばれました。
クロスカップリング反応で重要な役割を果たすパラジウム触媒ですが、高価で希少なレアメタルであるため、海外からの輸入に頼る日本にとっては使用量の削減が特に大きな課題となっています。理研らのグループは、シリコン基板の表面に微小なシリコンワイヤーをブラシの毛のように生やした「シリコンナノワイヤーアレイ」を用いて、そこに多数存在するナノスケール空間にパラジウムのナノ粒子を固定化することに成功しました。
この「シリコンナノワイヤーアレイ担持パラジウム触媒」を使って溝呂木・ヘック反応を行ったところ、パラジウムが従来の方法に比べて数万分の1の量の0.49 ppmで反応が進行し、また、触媒活性の指標である触媒回転数(TON)は200万回転に達することが確認されました。レアメタルへの依存を減らし、高効率・低コストの化学合成の実現につながることが期待できる成果として大いに注目されます。