小さなサムネイル表示だけ見ていた人はまず気づかなかったでしょうが、Chemistry - A European Journal 11月18日号 (Volume 19, Issue 47) の表紙をよく見ると、「宝探しの地図」を模したものになっています。構造式の下には、皺の入った紙に薄い色で、ヨーロッパと北米大陸の地図が描かれています。子どものころに読んだ、海賊の出てくる冒険物語が思い出されるような地図ですね。さらによく見ると、2つの陸地の上に「インスブルック」「シカゴ」の地名が見えます。
- 拡大表示 (PDF) Cover Picture (Chem. Eur. J. 47/2013)
この表紙はオーストリアのインスブルック大学と米国のイリノイ大学シカゴ校の共同研究グループによる論文に基づいたものです。論文では、21番目のアミノ酸として知られるセレノシステイン (Sec) が専用の転移RNA (tRNA) によって生合成されるメカニズムを解明するため、tRNAの作用を模倣しながら耐加水分解性を人工的に高めた「tRNAミミック」を合成したことが報告されています。
論文自体には海賊とか宝探しといった言葉は出てきませんが、著者らはこの表紙画像で、海を越えた国際的な共同研究によって「多くの困難を乗り越えて目ざす宝物を手に入れた」喜びを表現しているのでしょうか。
- 論文 ⇒ Rigger, L., Schmidt, R. L., Holman, K. M., Simonović, M. and Micura, R. (2013), The Synthesis of Methylated, Phosphorylated, and Phosphonated 3′-Aminoacyl-tRNASec Mimics. Chem. Eur. J., 19: 15872–15878. doi: 10.1002/chem.201302188 (本文を読むにはアクセス権が必要です)