先の「サイエンスアゴラ2013」などを通じて、昆虫食・昆虫料理について最近初めて知り、興味を持った方もいるのではないでしょうか。
- 参考リンク Chem-Stationさんの記事 「サイエンスアゴラの魅力-食用昆虫科学研究会・「蟲ソムリエ」中の人に聞く」)
世界的に広く行われている昆虫食ですが、欧米などの先進国では、畜産に代わる食料や環境保護といった観点から一部で関心が高まっているものの、一般には普及していません。過去に米国で行われた調査では、大多数の人が、虫を手で触るのは大丈夫だが唇で触れるのは無理と回答するなど、心理的な抵抗が強いようです。
そうした中ベルギーで、一般の人々に昆虫料理を実際に食べてもらい反応を聞くという前例のない実験が行われ、その結果が感覚研究の専門誌Journal of Sensory Studiesで報告されました。
- 論文 ⇒ Caparros Megido, R., Sablon, L., Geuens, M., Brostaux, Y., Alabi, T., Blecker, C., Drugmand, D., Haubruge, É. and Francis, F. (2013), Edible Insects Acceptance by Belgian Consumers: Promising Attitude for Entomophagy Development. Journal of Sensory Studies. doi: 10.1111/joss.12077
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この実験は、ベルギーの昆虫館で、来館者からボランティア参加者を募って行われました。来館者384人中189人(49.2%)という高い割合で、幅広い年齢層の人々の参加が得られました。もともと昆虫に興味があって来館した人たちだったので、昆虫食にも好奇心を示す人が多かったと考えられます。
試食に使われた昆虫は、イエコオロギ(コオロギの一種)とミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)で、ともにペットの餌としてよく使われます。実験には、病原体などで汚染されないよう、実験室で安全性に十分に配慮して育てたものが用いられました。
用意された昆虫料理は、以下の8種です。
- 焼いたコオロギ
- ゆでたコオロギ
- 焼いたミールワーム
- ゆでたミールワーム
- 焼いたコオロギとミールワームを粉々に砕いて混合
- 焼いたミールワームをバニラで風味付け
- 同・パプリカで風味付け
- 焼いたミールワームを液状のチョコレートに漬けたもの
各被験者には、これらのうち3種の料理をランダムに試食してもらい(食べたくない場合はパスできる)、好き嫌いを点数化してもらいました。その結果、最も評価が高かったのは 8.焼きミールワームのチョコレート漬け、次いで 3.焼いたミールワームと 7.パプリカ風味の焼きミールワーム が並びました。一方、コオロギ(1, 2)は、脚や触角がそのまま付いた姿が抵抗を招いたためか人気がありませんでした。また、ゆでたものよりも焼いたほうが、クリスピーな触感のため好まれたようです。
被験者189人のうち155人が、出された3種の料理をすべて試食したと回答、また161人が今後も昆虫を食べてもいいと回答しました。実験を行った著者らは、昆虫食が被験者の年齢や性別を問わず概ね好意的に受け入れられたことに満足しながらも、この結果がどこまで一般化できるかについては慎重な考えを示し、今後、より好まれる料理法などさまざまな角度からの研究が必要としています。