神戸大学大学院理学研究科 津田 明彦准教授らのグループは、音による振動に応答する超分子ナノファイバーを開発し、その溶液に向けてクラシック音楽を流したところ、メロディーに合わせてナノファイバーが整列する現象を発見しました。音楽とナノスケール分子との物理的相互作用に関する初めての研究例となるこの成果は、このほどChemPlusChem誌で論文として発表されました。
- 論文 ⇒ Miura, R., Ando, Y., Hotta, Y., Nagatani, Y. and Tsuda, A. (2014), Acoustic Alignment of a Supramolecular Nanofiber in Harmony with the Sound of Music. ChemPlusChem. doi: 10.1002/cplu.201300400 (無料公開)
* 追記: この論文が掲載号の表紙に選ばれました。(右画像) 写真で演奏中のオーケストラは神戸大学交響楽団だそうです。 (2014/02/03)
津田准教授らが開発したアントラセン誘導体からなる超分子ナノファイバーは、1000Hz以下の幅広い周波数の可聴音による振動を感知して整列する性質を持っています。これをn-ヘキサンに溶解した溶液に向けて、スピーカーからクラシック音楽(ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」とモーツァルトの交響曲第40番、それぞれ第1楽章)を流すと、ナノファイバーは音の強弱や高低の変化に敏感に反応して、まるで音楽に合わせて踊っているかのように整列と緩和を繰り返すことが、LDスペクトル測定によって確認されました。この整列現象は、音楽の音による溶液の振動と流動による流体力学的な相互作用によって引き起こされたと考えられます。
音響と物質のミクロレベルでの関わりの理解につながり、今後ナノテクノロジーなどへの応用が期待できるユニークな研究として注目されます。
関連リンク
- 化学ニュースサイトChemistry Viewsによる紹介記事: Musical Molecules (January 8, 2014, Chemistry Views)