2つ以上の反応を連続的に進行させるタンデム反応(またはカスケード反応、ドミノ反応)は、効率的な合成経路の実現に寄与するとして最近注目されています。カリフォルニア工科大のB. M. Stoltz教授らは、触媒的シグマトロピー転位反応を例に採り、タンデム反応のこれまでの成果を解説する詳細な総説をAngewandte Chemie International Edition (ACIE)で発表しました。
- 論文 ⇒ Jones, A. C., May, J. A., Sarpong, R. and Stoltz, B. M. (2014), Toward a Symphony of Reactivity: Cascades Involving Catalysis and Sigmatropic Rearrangements. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201302572 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
この総説は、反応を楽器に見立てて、2つの素反応によるタンデム反応を「デュエット」、以下トリオ、カルテット、クインテット…と命名しているのがユニークなところです。表題中にSymphony(交響曲)とあるのもそこから来ていて、著者らは、オーケストラの楽器のように多数の反応が秩序を持って生じる「反応の交響曲」を、タンデム反応の究極形として思い描いています。
たとえ一番シンプルな「デュエット」でも、2つの楽器の組み合わせが変わると全く異なる音楽を奏でるように、2つの反応をどのように選んで組み合わせるかによって、多種多様なタンデム反応が実現する可能性があります。比較的歴史の浅いこの分野で化学者が創造性・芸術性を発揮できる余地はまだまだ大きく、この総説はそのためのヒントを与えてくれそうです。