- 論文 ⇒ Babii, O., Afonin, S., Berditsch, M., Reiβer, S., Mykhailiuk, P. K., Kubyshkin, V. S., Steinbrecher, T., Ulrich, A. S. and Komarov, I. V. (2014), Controlling Biological Activity with Light: Diarylethene-Containing Cyclic Peptidomimetics. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201310019 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
ジアリールエテンは、特定の波長の光に応答して構造・性質が可逆的に変化する「フォトクロミック化合物」の代表格として知られています。同じフォトクロミック化合物であるアゾベンゼンでは、生体分子ペプチドに組み込んで光による活性制御を試みる研究が多数報告されてきましたが、熱安定性や耐久性に勝るジアリールエテンでは同様の先行研究が不足していました。
Ulrich教授らのグループは、ジアリールエテンを基にしたアミノ酸類縁体を「光スイッチ」として合成し、それを環状ペプチド抗生物質であるグラミシジンS (GS)の骨格に組み込むことに成功しました。ジアリールエテンは可視光の照射で開環、UV照射で閉環と構造が切り替わります。それを組み込んだグラミシジンS類縁体は、光スイッチが開環の状態にあるときは抗菌作用が活性化しますが、閉環状態のときは不活性となることが分かりました。
この効果を視覚的に表したのが右上の表紙画像です。これは、グラミシジンS類縁体を加えたバクテリアの培地に、絵の形に穴を切り抜いたボール紙を被せて可視光を照射したものです。光が当たった部分だけ抗菌作用が働いてバクテリアが死んだことが、色の変化で示されています。
同グループでは、今回の発見が細菌の繁殖を局所的に防ぐといった医療用などに応用されることを期待しています。
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