日本化学会の英文誌The Chemical Recordの2014年2月号 (Volume 14, Issue 1) は、「向山アルドール反応」の特集号です。向山光昭博士らによる向山アルドール反応の初報(1973年)から40年を迎えた昨年、8月に東京で記念シンポジウムが開催されたほか、Asian Journal of Organic Chemistryから特集号が発行されるなど、祝賀イベントが相次ぎました。その一環として発行されたThe Chemical Record誌の特集号では、上記の記念シンポジウムの組織委員長を務めた京都大・村上 正浩教授による巻頭言に加えて、向山博士に直接師事した化学者らが同反応を用いた成果を解説する総説(Personal Account)を収録しています。
同号の収録内容を読む
- 目次: Special Issue: 40 Years of the Mukaiyama Aldol Reaction (
収載論文の本文を読むにはアクセス権が必要です2014年12月末まで全論文を無料公開) - 同誌のエディターBrian JohnsonによるEditorial: Lasting Legacies
- 京都大・村上 正浩教授の巻頭言: Murakami, M. (2014), Special Issue Celebrating 40 Years of the Mukaiyama Aldol Reaction: Introductory Remarks. Chem. Rec., 14: 12–13. doi: 10.1002/tcr.201410002
本号にはもう一つの目玉があります。ヒノキチオールの発見者で東北大学で活躍した有機化学者 故・野副鉄男博士(右写真・1902-1996年)が長年にわたって集めた世界の化学者との交流を伝える1200頁のサイン帳の復刻企画が、同誌で全15回にわたって進行中です。本号では、その第9部とともに、米ジョンズ・ホプキンス大のJohn D. Tovar准教授から特別寄稿されたエッセイを掲載しています。
- エッセイ ⇒ Tovar, J. D. (2014), Prospecting in Hückel-space: From Hinokitiol to Non-benzenoid Organic Electronics. Chem. Rec., 14: 214–225. doi: 10.1002/tcr.201300034
2002年にPh. D.を取得した若手化学者であるTovar准教授は、生前の野副博士とは出会う機会がありませんでしたが、今回のエッセイで、野副博士が多大な貢献を遺した非ベンゼン系芳香族化合物の化学が、現在のπ共役系有機エレクトロニクス材料の開発における成果と深く結びついていることを示しています。野副博士と交流のあった化学者らが思い描いてサイン帳にイラストとして残した新規化合物もいくつも例に挙げられ、そういった構想が数十年を経て最新のエレクトロニクス材料に発展していったことが分かる興味深いエッセイです。
■ 野副教授のサイン帳の復刻は、The Chemical Record誌の2012年10月号以降の各号に連載されているほか、特設サイト(無料公開)でもご覧いただけます。