コーヒーは好きだけれど、飲んだ後の胸焼けや胃のムカムカ感が苦手という人は少なくないのではないでしょうか。これはコーヒーを飲むことで胃液の分泌が促進され、胃酸過多の状態になるためで、コーヒーに含まれるカフェインが原因と言われることもありますが、これまでの研究では原因物質を特定するには至っていません。
このほどMolecular Nutrition & Food Research誌に掲載された論文で、ドイツ食品化学研究所などの研究者によるグループは、ダークロースト(深煎り)とミディアムロースト(中煎り)のコーヒーではカフェイン量がほとんど変わらないのに、ダークローストを飲んだときの方が胃液分泌が増えにくいとの研究結果を報告しました。
- 論文 ⇒ Rubach, M., Lang, R., Bytof, G., Stiebitz, H., Lantz, I., Hofmann, T. and Somoza, V. (2014), A dark brown roast coffee blend is less effective at stimulating gastric acid secretion in healthy volunteers compared to a medium roast market blend. Mol. Nutr. Food Res.. doi: 10.1002/mnfr.201300890 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 解説記事 ⇒ Is Coffee Giving You Heartburn? Try a Darker Roast! ((March 8, 2014, Chemistry Views)
同グループは、健康な被験者に炭酸水素ナトリウム(重曹)を投与して胃内のアルカリ性度を高めた後にコーヒーを飲んでもらい、胃液分泌によって胃内pH値が元の状態に戻るのに要する時間を測定しました。その結果、元の胃内pH値に戻るまでの時間は、ダークローストのコーヒーを飲んだときのほうがミディアムローストよりも平均で約40%長くかかることが分かり、胃液分泌の増加が穏やかであることを示しました。ダークローストの方が苦味が強いので何となく胃にきつそうですが、意外な結果ですね。
両方のコーヒーの成分分析では、カフェイン量にはほとんど違いが見られませんでした。一方カフェイン以外の物質では、ダークローストはC5HT・クロロゲン酸・トリゴネリンの含有量が少なく、N-メチルピリジニウムが多いことが分かりました。これらのうちどの成分がどのようなメカニズムで胃液分泌に影響するのかは今後の研究による解明を待つ必要がありますが、将来的には「飲んでも胃への刺激が少ないコーヒー」の開発につながるかもしれません。
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