液晶ディスプレイや有機EL照明などのエレクトロニクス分野では、重く割れやすいガラス基板に代えて、軽くて柔軟性に富んだ透明高分子フィルムの利用に関心が高まっています。しかし、透明高分子フィルムには熱による膨張が起こりやすいなどの難点があるため、セルロースナノファイバーと高分子を複合化させることで熱膨張を抑える試みがなされていますが、ナノファイバー製造コストの高さといった課題が残されていました。
京都大学生存圏研究所・矢野浩之教授らの研究グループは、製紙用の木材パルプを構成するセルロースナノファイバーの結束構造を化学修飾によってほぐし、その間に樹脂を浸透させることで、透明度が高く熱膨張の少ないパルプ繊維複合樹脂材料を合成することに成功しました。この効率的な「透明紙」製造法は、機械によってパルプの繊維をほぐす従来の方法と比べて製造コストの大幅削減を可能にし、柔軟で折り曲げ可能な電子機器「フレキシブルエレクトロニクス」への利用を促進することが期待されます。
この成果は、光学材料の専門誌Advanced Optical Materialsで報告されました。
- 論文 ⇒ Yano, H., Sasaki, S., Shams, Md. I., Abe, K. and Date, T. (2014), Wood Pulp-Based Optically Transparent Film: A Paradigm from Nanofibers to Nanostructured Fibers. Advanced Optical Materials, 2: 231–234. doi: 10.1002/adom.201300444 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 京都大学の発表資料 ⇒ 透明紙の開発に成功 (2014年3月18日)