<論文紹介> インフルエンザ検査が楽になる? 細胞が発する揮発性有機化合物(VOC)がウイルス感染のマーカーとなる可能性 (ChemBioChem)

healthcareインフルエンザ検査は、鼻の奥の粘膜から綿棒でウイルスを採取する方法が一般的ですが、ちょっとした痛みを伴うことがあり苦手な人が多いようです。しかし将来は、飲酒運転取締りのアルコール検査のように息を調べるだけで、どの型のウイルスに感染しているかまで分かるようになるかもしれません。

カリフォルニア大学デービス校のCristina E. Davis教授らのグループは、インフルエンザウイルスに感染した細胞が放出する多様な揮発性有機化合物(VOC)を分析した結果、ウイルスの型に応じてVOCの構成成分が特有のパターンを示すことを発見し、ChemBioChem誌で報告しました。

ChemBioChem

  •  論文  ⇒ Aksenov, A. A., Sandrock, C. E., Zhao, W., Sankaran, S., Schivo, M., Harper, R., Cardona, C. J., Xing, Z. and Davis, C. E. (2014), Cellular Scent of Influenza Virus Infection. ChemBioChem. doi: 10.1002/cbic.201300695 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

Davis教授らは、リンパ芽球様B細胞というリンパ球への分化前の未成熟な細胞を実験に用いて、この細胞が3種類のインフルエンザウイルス(人に感染するH1N1型ウイルスおよび2種類の鳥インフルエンザウイルス)のそれぞれに感染したときに放出するVOCを、ガスクロマトグラフ質量分析で調べました。その結果、3種のウイルスに感染した細胞はいずれも、未感染の細胞からは見られなかった複数のVOCを発していることが明らかになりました。また感染したウイルスの型ごとに細胞が発するVOCのパターンが異なることも分かり、どの型のウイルスに感染したかを特定するためのマーカーとしてVOCが役立つ可能性を示唆しました。

実用化に向けてはさらに詳しい研究が必要ですが、今回の発見は苦痛の少ないインフルエンザ検査法をもたらすだけでなく、ウイルス感染した細胞が特定のVOCを発する機序を調べることで新たな治療法の発見につながることが期待されます。

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