Asian Journal of Organic Chemistry (AJOC) に掲載された東京薬科大学・矢内 光 助教らによる強酸性炭素酸合成に関する論文を、化学ニュースサイトChemistry Viewsが注目論文として紹介しました。この論文は、AJOC誌が最近発行した有機分子触媒特集号に収載されています。
- 紹介記事 Building Strong Carbon Acids from 1,1-Bis(triflyl)alkadienes (April 27, 2014, Chemistry Views)
- 論文 Yanai, H., Egawa, S., Yamada, K., Ono, J., Aoki, M., Matsumoto, T. and Taguchi, T. (2014), 1,1-Bis(triflyl)alkadienes: Easy-To-Handle Building Blocks for Strongly Acidic Carbon Acids. Asian Journal of Organic Chemistry, 3: 556–563. doi: 10.1002/ajoc.201402010 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
炭素酸 (carbon acid) は一般的に弱酸性で触媒活性が低い中で、ビストリフリルメチル基(Tf2CH)を持つアルカン類は、例外的に強酸性で高い触媒活性を示し、また置換基導入によってさまざまな触媒機能を与えられることが知られています。しかし、従来の強酸性炭素酸の合成法は、不安定な中間体を経由するため困難が伴うことから、安定で取り扱いの容易な合成ブロックの発見が待たれていました。
今回の論文で矢内助教らは、ビス(トリフリル)メタン(Tf2CH2) とα,β-不飽和アルデヒドから簡便な方法で合成した1,1-ビス(トリフリル)アルカジエンが、強酸性炭素酸の安定的な合成ブロックとして有用であることを報告しました。この方法で得られたアルカジエンを有機セリウム試薬などと反応させることによって強酸性炭素酸が得られ、それらが向山アルドール反応などの触媒として利用できることが明らかになりました。炭素酸触媒の可能性を広げる成果として、今後の発展が期待されます。