京都大学化学研究所の若宮 淳志准教授、村田 靖次郎教授、梶 弘典教授らは、独自に設計・合成した「準平面型」骨格を用いて、結晶中だけでなく非晶質(アモルファス)膜中でも方向によって電荷輸送特性が異なる「異方性」を顕著に示す革新的な有機半導体材料の開発に成功しました。有機EL素子や有機太陽電池への応用が期待できるこの成果は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で論文として報告されました。
- 京都大学の発表資料 準平面型の骨格を用いた革新的有機半導体材料開発に成功 -太陽電池の高効率化に期待- (2014年4月26日)
- 論文 Wakamiya, A., Nishimura, H., Fukushima, T., Suzuki, F., Saeki, A., Seki, S., Osaka, I., Sasamori, T., Murata, M., Murata, Y. and Kaji, H. (2014), On-Top π-Stacking of Quasiplanar Molecules in Hole-Transporting Materials: Inducing Anisotropic Carrier Mobility in Amorphous Films. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201400068 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
若宮准教授らが設計した準平面型の構造をもつ分子(トリアリールアミン二量体)は、結晶中で分子が1次元方向に完全に重なった形で並ぶ「on-top πスタック構造」をとるとともに、その構造を反映して、電荷移動特性に大きな異方性を示すことが分かりました。さらに、太陽電池や有機EL素子で用いられる非晶質膜中でも、垂直方向に分子が重なった配列構造をある程度保ち、基板の垂直方向に対して高い電荷輸送特性を示す異方性が観測されました。
これまで、非晶質膜中での分子の配列構造や、それが電荷輸送特性に及ぼす影響については不明な部分が多かったため、今回の発見が非晶質有機半導体材料開発の分子設計に進歩をもたらし、太陽電池の高効率化や有機EL素子の高性能化といった応用的成果につながることが期待されます。