ロケット燃料に使われる物質ヒドラジンは、爆発性や毒性が高いため、取り扱いが極めて難しいのが難点です。今後の宇宙科学の発展のためには、安全で環境にやさしいヒドラジン代替燃料の開発が求められます。
一方、ユニークな性質から注目が集まるイオン液体は、一般に不燃性・難燃性を示しますが、最近になって可燃性のイオン液体が次々と発見されています。それらの可燃性イオン液体は、揮発性が低い、点火遅れが短い、取り扱いや保管が容易といった燃料に適した性質を備えることから、ヒドラジンの代替燃料となることが期待され研究が進められてきました。
中国工程物理研究院と米アイダホ大学の研究グループは、シアノ水素化ホウ素をベースにしたイオン液体を独自に合成し、それがロケット燃料として従来のヒドラジンに匹敵する性能を示すとともに、安価で合成可能、安定性が高く保管しやすい、毒性が低いといった利点を備えることを Chemistry - A European Journal で報告しました。ヒドラジンに代わるロケット燃料として、今後の実用化が期待されます。
- 紹介記事 Going Green in Space with Ionic Liquids (April 30, 2014, Chemistry Views)
- 論文 Zhang, Q., Yin, P., Zhang, J. and Shreeve, J. M. (2014), Cyanoborohydride-Based Ionic Liquids as Green Aerospace Bipropellant Fuels. Chem. Eur. J.. doi: 10.1002/chem.201402704 (本文を読むにはアクセス権が必要です)