石油などの化石燃料に代わる新たな資源として、藻類への注目が高まっています。藻類は、農業に適していない土地でも大量培養が可能なため、そこから抽出した油(藻類オイル)からディーゼル油などの代替となる「バイオ燃料」を効率的に生産するための研究開発が盛んに行われています。
しかし、藻類の培養にも一定のエネルギー投入が必要となるため、せっかく生産された油を単に燃料として燃やしてしまうのはあまり効率的とはいえません。藻類オイルを燃料ではなく、化学製品の原料として利用するための研究も行われていますが、基本的には、現在石油から作られている化学原料を同じように藻類からも作るという試みに留まっています。実は藻類オイルには、不飽和脂肪酸を中心に、石油や一般的な植物油からは得られないユニークな脂質が豊富に含まれるため、そういった成分を化学原料として直接利用できれば、より高い付加価値を生み出せることが期待できます。
独コンスタンツ大学の研究グループは、珪藻の一種フェオダクチラム(Phaeodactylum tricornutum)から抽出した藻類オイルを出発物質として、COとメタノールを使った触媒反応によって得られるジエステルを経由してポリエステルを合成する方法を開発し、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告しました。藻類をユニークで価値の高い資源として活用するための新しいアプローチとして注目されます。この論文は、ACIE誌の注目論文Hot Paperに選ばれました。
- 論文 ⇒ Roesle, P., Stempfle, F., Hess, S. K., Zimmerer, J., Río Bártulos, C., Lepetit, B., Eckert, A., Kroth, P. G. and Mecking, S. (2014), Synthetic Polyester from Algae Oil. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201403991 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
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