＜論文紹介＞ ワカメが燃料電池用触媒に生まれ変わる｜多孔質ヘテロ原子ドープ炭素材料として、白金触媒に匹敵する性能

燃料電池などで反応の鍵を握る酸素還元触媒には、現在主に白金が用いられていますが、安価な代替材料の探索が盛んに進められています。韓国・Korea UniversityのJong-Sung Yu教授らのグループは、先にヒトの髪の毛を原料とする酸素還元触媒の開発を報告しましたが、今度は食卓でおなじみのワカメを原料に用いた触媒の開発に成功し、ChemSusChem誌で報告しました。（右： 2014年6月号の裏表紙に採用）

• 　論文　　⇒　Song, M. Y., Park, H. Y., Yang, D.-S., Bhattacharjya, D. and Yu, J.-S. (2014), Seaweed-Derived Heteroatom-Doped Highly Porous Carbon as an Electrocatalyst for the Oxygen Reduction Reaction. ChemSusChem, 7: 1755–1763. doi: 10.1002/cssc.201400049 （本文を読むにはアクセス権が必要です）

今回開発された酸素還元触媒は、乾燥ワカメを熱分解したのち不純物を除去するという簡単な手順で作ることができます。ワカメは塩抜きした跡が微細な穴になっているため、体積に対して表面積が大きく触媒に適した「多孔質カーボン」としての性質を備えています。さらに、ワカメには窒素・硫黄・リンが含まれるため、白金触媒の代替として注目が集まっている「ヘテロ原子ドープ炭素材料」の前駆体として申し分がありません。

ワカメから生まれたこの触媒は、実験では白金触媒に匹敵する高性能を示しました。特に、白金はメタノールによって触媒活性低下が起こるという弱点を持つのに対し、この触媒はメタノールに対する安定性が高いため、直接メタノール燃料電池に用いる触媒として有利です。身近なワカメが高価な白金の代わりになるというのは意外性がありますが、実用化に向けての研究の進展が期待されます。