地球上で繁栄を極めた恐竜は、鳥の先祖となった一部の飛行恐竜を除き、白亜紀末期の約6600万年前に突然姿を消しました。その原因は、科学上の大きな謎のひとつとして専門家だけでなく多くの人の関心を呼んできました。さまざまな説が発表された中で、現在はメキシコのユカタン半島に落下した巨大隕石の衝突が原因として有力視されていますが、それが唯一の原因かについては異論を唱える研究者もいます。
このほど英エジンバラ大を中心とする国際的な研究グループは、化石記録などの最新データに基づいて、恐竜は隕石衝突の数百年前から既に衰退に向かっていて、その中こで起こった隕石衝突が決定打となって絶滅に至ったとの説を発表しました。この論文は、7月28日にBiological Reviews誌の電子版に掲載されました。
- 論文 ⇒ Brusatte, S. L., Butler, R. J., Barrett, P. M., Carrano, M. T., Evans, D. C., Lloyd, G. T., Mannion, P. D., Norell, M. A., Peppe, D. J., Upchurch, P. and Williamson, T. E. (2014), The extinction of the dinosaurs. Biological Reviews. doi: 10.1111/brv.12128 (無料公開中)
- 発表資料 ⇒ Dinosaurs fell victim to perfect storm of events, study shows (July 29, 2014)
この研究グループは、過去20年間に得られた最新データを基に、絶滅に先立つ時期の恐竜の多様性や環境変動を新たに分析し、絶滅の進行の速さと絶滅の原因について検討を行いました。それによると、北米で発見された一連の化石は、隕石衝突の数百万年前から大型草食恐竜の多様性が減少し始めたことを示しています。同グループは、これは同じ時期に起こった火山活動の活発化・海面上昇・気温低下など環境の激変が招いたもので、大型草食恐竜の多様性減少が肉食恐竜を含む食物連鎖に影響を与え、恐竜全体の衰退を引き起こしたと推測しています。
同グループでは、そうした中で起こった巨大隕石衝突が恐竜の絶滅に決定的な役割を果たしましたが、仮に恐竜がそのとき衰退期になかったとしたら、隕石衝突後もある程度の種が生き延びていた可能性が高いとして、隕石衝突が起こったタイミングの悪さを強調しています。もし隕石の落下が数百万年ずれて起こっていたら、地球上では今でも恐竜が闊歩し、人類の姿はなかったかもしれません。
ところでこの論文にアクセスすると、電子版の公開から2日しか経っていないのに、Altmetricスコア が162と非常に高い数値を示しています。(7月30日正午現在) Altmetricスコアは、論文についてTwitterやFacebook、ブログ、ニュースサイトなどで言及された回数から算出する論文のソーシャル・インパクト指標で、Wiley Online Libraryの全ジャーナルで今月から提供が始まったものです。スコアの高さから、この論文が公開直後から多くの読者やニュースメディアの関心を集めていることが分かります。
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