<論文紹介> ピザの焼け方を科学的に分析|チーズの種類によって、気泡や焦げ具合はどう変わる?

pizza窯から出てきた焼きたてのピザの上で、溶けたチーズがふつふつと泡立ち、ところどころにうっすら焦げ目がついている様子は、いかにも食欲をそそります。このような気泡(ブリスター)や焦げ目ができるプロセスや、チーズの種類による違いを科学的に分析した論文が、ニュージーランドなどの共同研究グループによってJournal of Food Science誌で発表されました。単に焼き上がったピザの見た目や味を主観的に比べたのではなく、機械視覚システム・画像解析といった技術を駆使して焼け方の違いを正確に測定したのが、この論文のユニークな点です。

Journal of Food Science

実験では、モッツァレラ、チェダー、エメンタールなど7種類のチーズが使われました。ピザに一番よく使われ、長く伸びることでおなじみのモッツァレラは弾性が高いため、熱された生地から上がってくる水蒸気によって丸い気泡ができやすくなっています。気泡が盛り上がるとともにチーズの油分が周囲に流れ落ち、油が薄くなった頂点部分に焦げ目がつきやすくなります。

他のチーズ、例えばチェダーは、モッツァレラよりも弾性が低いため水蒸気による膨らみがあまりできません。チェダーチーズで作ったピザは、気泡の少ない平たい表面になりますが、全体に均等に焦げ目がつきます。一方、グリュエールチーズではモッツァレラと同様に気泡ができますが、ほとんど焦げ目がつきません。これは、グリュエールはモッツァレラよりも油分を多く含むため、気泡が盛り上がった部分にも油が残り、焦げるのを防ぐためです。このように、それぞれのチーズの弾性や含まれる油分・水分などの要因によって焼け方が変わることが確かめられました。

ピザに気泡ができるのはいいがあまり焦げてほしくないときはモッツァレラとグリュエールを混ぜて使うというように、好みに合わせて複数のチーズの組み合わせを工夫するといいかもしれません。今回の実験手法は、ピザの作り方だけでなく、新しいピザ用チーズの開発・評価などへも応用が期待できそうです。

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