1953年にGeorg Wittig (1979年ノーベル化学賞受賞)が発見したウィッティヒ反応は、ビタミンA合成などに用いられる重要かつ基本的な人名反応です。もともとのウィッティヒ反応は化学量論的反応で、副生成物としてホスフィンオキシドが大量に生じることが難点でしたが、発見から半世紀以上を経た2009年になって、O’Brienらが触媒的ウィッティヒ反応を初めて報告しました。しかし、触媒的ウィッティヒ反応をエナンチオ選択的に進行させる方法の開発は依然として課題となっていました。
今回、独ロストック大学ライプニッツ触媒研究所のThomas Wernerグループリーダーらは、キラルなホスフィン誘導体を用いて触媒的エナンチオ選択的ウィッティヒ反応に初めて成功し、European Journal of Organic Chemistry (Eur JOC) で報告しました。生成物の光学純度を示す鏡像体過剰率は最大で90%、収率は最大63%と、それぞれ十分に高い値が得られました。60年以上の歴史を持つウィッティヒ反応のさらなる進歩につながることが期待されます。
- 論文 ⇒ Werner, T., Hoffmann, M. and Deshmukh, S. (2014), First Enantioselective Catalytic Wittig Reaction. Eur. J. Org. Chem.. doi: 10.1002/ejoc.201402941 (本文を読むにはアクセス権が必要です)