自然に存在する生物には、長年の進化を経て驚くべき仕組みや機能を備えているものが数多く見られます。そういった生体の組織・機能を模倣して材料開発などに生かす「バイオミメティクス」(生体模倣技術)と呼ばれるアプローチはすっかり定着し、現在も活発に研究されています。代表的な研究対象としては、細くても強靭なスパイダーシルク(クモ糸)、水を寄せ付けないハスの葉、垂直な壁も登れるヤモリの足裏などが挙げられます。最近では、単に生体を模倣した材料を作るのではなく、生体から得た着想を発展させてそれ以上の機能の実現をめざすという意味で「バイオインスパイアード材料」(bioinspired materials) という用語も用いられるようになっています。
このほど中国科学院化学研究所のグループがAdvanced Materials誌に発表した総説は、このバイオインスパイアード材料研究の分野での最近の展開を、材料の構造(1D・2D・3D)ごとにまとめて整理しています。1D構造としてはスパイダーシルクやホッキョクグマの体毛にヒントを得た研究、2D構造では構造色コーティングおよび結晶、防汚表面、反射防止表面、3D構造では制振材料、エアロゲル、刺激応答性ハイドロゲル、自己修復性材料などにおける成果が紹介されています。当分野の概要を知り、また最新の動向を知るための文献としてお勧めします。
- 論文 ⇒ Zhao, N., Wang, Z., Cai, C., Shen, H., Liang, F., Wang, D., Wang, C., Zhu, T., Guo, J., Wang, Y., Liu, X., Duan, C., Wang, H., Mao, Y., Jia, X., Dong, H., Zhang, X. and Xu, J. (2014), Bioinspired Materials: from Low to High Dimensional Structure. Adv. Mater.. doi: 10.1002/adma.201401718 (本文を読むにはアクセス権が必要です)