約70年前にKharaschによって初めて開発された原子移動ラジカル付加反応(ATRA)は、その後のブレイクスルーを経て、高アトムエコノミーの付加反応として注目が高まっています。ATRAはまた、工業的に広く用いられる原子移動ラジカル重合(ATRP)の基礎をなす反応でもあります。
このほどスペイン・Institute of Chemical Research of Catalonia (ICIQ) のPaolo Melchiorre教授らのグループは、単純な有機分子 p-アニスアルデヒドが、光照射によってATRAを効率よく促進する光レドックス触媒として働くことを発見しました。実験では、23Wの家庭用蛍光ランプの下で、室温でハロアルカンのオレフィンへの付加を進行させることが確認されました。これまでに開発されたATRAの反応の多くは、高温や有毒な試薬、高価な遷移金属触媒などを必要としましたが、今回の反応はそれらの難点を克服するもので、今後の一層の発展が期待されます。
この成果はAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告され、同誌の注目論文VIP (Very Important Paper) に選ばれました。
- 論文 ⇒ Arceo, E., Montroni, E. and Melchiorre, P. (2014), Photo-Organocatalysis of Atom-Transfer Radical Additions to Alkenes. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201406450 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
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