2014年のノーベル生理学・医学賞は、ロンドン大学ユニバーシティーカレッジのジョン・オキーフ (John O´Keefe) 教授、ノルウェー科学技術大学のマイブリット・モーセル (May-Britt Moser) 教授とエドバルト・モーセル (Edvard I. Moser) 教授(夫婦)の3氏による共同受賞が決まりました。授賞理由は「脳内で空間感覚を担う神経細胞の発見」で、動物が空間の中での自分の位置を把握するメカニズムについての研究業績を評価されたものです。授賞を伝えるスウェーデン・カロリンスカ研究所のプレスリリースでは、この空間把握メカニズムを「脳内のGPS」と例えています。
- 日経サイエンスによる解説 2014年ノーベル生理学・医学賞:空間を把握する脳のメカニズムを解明した3氏に (2014年10月7日)
受賞者の3氏はいずれも、Wileyが出版する海馬研究の専門誌Hippocampus誌の編集委員を現在も務めるとともに、同誌をはじめとするWileyのジャーナルや書籍で多くの論文・著作を出版してきました。今回の受賞を記念して、Wileyではそれらの一部を2014年12月末まで無料公開することにしました。授賞対象となった研究内容を理解するための一助としてお役立て下さい。
オキーフ教授は1971年、空間内でのラットの居場所に応じて、脳の海馬内の決まった部位で神経細胞が活性化することを発見、この神経細胞を後に「場所細胞」(place cells) と呼び、当分野の先駆者となりました。
- 2005年の論文 Dual phase and rate coding in hippocampal place cells: Theoretical significance and relationship to entorhinal grid cells
- 事典 Encyclopedia of Cognitive Science への寄稿
・Hippocampus
・Place Cells - 叢書Ciba Foundation Symposiumへの寄稿(1978年)
Single Unit and Lesion Experiments on the Sensory Inputs to the Hippocampal Cognitive Map
一方のモーセル夫妻は、オキーフ教授の発見から30年以上経た2005年に、場所と経路の認識を司る別の神経細胞を発見し「グリッド細胞」(grid cells) と命名、その後の研究の飛躍的な発展に貢献しました。
- モーセル夫妻が客員編集長として参加したHippocampus誌の「グリッド細胞」特集号(2008年・全収載論文を無料公開)
・目次 Table of Contents - 同号に収載されたモーセル夫妻の論文
・Foreword: Special issue on grid cells (巻頭言)
・A metric for space (総説)
・Progressive increase in grid scale from dorsal to ventral medial entorhinal cortex
・Grid cells in mice