興奮・覚醒作用を持つ物質で「ジェラナミン」という名前でも知られるDMAA(1,3-ジメチルアミルアミン)は、スポーツサプリなどの成分として一時期人気がありましたが、心臓発作・突然死などとの関連が疑われ、米国ほかで販売禁止となりました。しかしその後も、サプリ業者が規制を逃れるためDMAAと似た構造・作用をもつ代替化合物を使用する例が相次いで見つかっています。
DMBA(1,3-ジメチルブチルアミン)も、DMAAと似た構造をもつ類縁体のひとつですが、それを成分に含むと明記したサプリ製品はこれまで販売されていません。しかし、このほどハーバード・メディカルスクールのPieter A. Cohen准教授らのグループは、市販サプリの成分のうちAMP Citrate, 4-アミノ-2-メチルペンタンなどと表記されているものの実体がDMBAではないかと疑い、米国内で市販されるサプリ14製品の成分分析を行いました。その結果、そのうち12製品からDMBAが検出されました。これらのサプリ製品は、アスリートの運動能力向上・減量・精神力強化などを効能に謳っています。
DMBAの作用については1940年代に行われた動物実験の報告が2例あるのみで、人体への作用・健康リスクとも現時点では分かっていません。しかし、DMAAに類似した構造から、興奮・覚醒作用をもつ可能性が高いと推測されます。今回DMBAが検出されたサプリを各製品の推奨に従い摂取した場合、DMBAの摂取量は1回あたり13~120 mg、1日あたりでは最大320 mgに相当します。
最近オランダでは、Unstoppableというサプリ製品の摂取者で興奮の高まりなどの副作用が報告され、このサプリを分析したところDMBAが検出されました。DMBAが副作用の直接の原因かどうかは分かっていませんが、Cohen准教授らのグループは、健康リスクが疑われる成分を含む製品が安全性確認なしに販売されていることを重く見て、サプリ販売業者に対してDMBA含有製品の即時回収、また規制当局に対して消費者への警告などの措置を求めています。
この分析結果を報告する論文はDrug Testing and Analysis誌に掲載されるとともに(無料公開中)、メディアやニュースサイトで取り上げられ大きな反響を呼んでいます。論文のTable 1では、分析対象となったサプリ製品名とそれぞれのDMBA含有量を見ることができます。
- 論文 ⇒ Cohen P., Travis J., and Venhuis B. (2014) A synthetic stimulant, 1,3-dimethylbutylamine (DMBA), never tested in humans, is found in multiple dietary supplements, Drug Test. Analysis, doi: 10.1002/dta.1735. (無料公開中)
- 化学ニュースサイトChemistry Viewsの紹介記事 Synthetic Stimulants In Dietary Supplements (October 16, 2014, Chemistry Views)