皆さんの中には、論文誌のエディター(編集者)と普段から学会などで話をしたりメールをやり取りしている人もいれば、そうでない人もいるでしょう。彼らエディターは、どのようなバックグラウンドをもつ人たちで、日々どういった仕事をしているのでしょうか? Asian Journal of Organic Chemistry (Asian JOC)のエディター Richard Threlfall氏(右下写真)が、化学ニュースサイトChemistry Viewsのインタビューに答えてそのあたりを語っています。
- Career: As a Chemist in An Editorial Office (October 16, 2014, Chemistry Views)
エディターになった経緯は? Threlfall氏は、英リバプール大で化学の博士号を取得したのち、短期の職を経て、米コロラド大学ボルダー校のポスドクとして研究生活に戻りました。そこで科学コミュニケーション関係のイベント運営に参加したのを契機に出版界に入ることを思い立ち、最初にAngewandte ChemieのAssistant Editorに、次いで2012年に現職であるAsian JOCのManaging Editorに就任しました。エディターにとって博士号は必須というわけではありませんが、自ら研究に携わった経験が役立つのは確かなようです。
どんな仕事? エディターの日常的な仕事としては、投稿論文に目を通して査読者に送る、査読レポートをもとに採否の判定を下す、校正をチェックするなどがあります。そのほか、査読者を増やすため研究者を勧誘したり論文投稿を依頼する、また掲載論文の広報活動を行うといったことも仕事の一部です。Threlfall氏は、エディターの仕事で好きな点として、学会や編集委員会などで多くの人に会ったり、化学について広い視野を持てるようになることを挙げています。
エディターになるには何が必要? 化学の知識以外でエディターの仕事に必要なスキルとして、Threlfall氏は”diplomacy”(外交力・交渉術)を挙げています。例えば論文のリジェクト判定に納得のいかない著者から理由の説明を求められた場合に、著者にとって耳の痛いことを伝え、しかも冷静に受け止めてもらうためにこのスキルが求められるそうです。そのほか、化学誌エディターの仕事に興味のある学生には、(1) ブログなどで文章を書く練習をすること (2) 多くの記事を読んで、化学の最新の全体像を把握すること (3) インターンシップでの体験や、学会などで会うエディターに話を聞くことを通じて実際の仕事内容を知ること を勧めています。
日本化学会などの大会では、Threlfall氏らエディターが参加して口頭発表を聴講したり、出版社ブースに立っていたりすることが珍しくありません。エディターの仕事内容に限らず、論文投稿についての質問などにも喜んで答えてくれるはずですので、お気軽に声をかけて下さい。
- なおThrelfall氏は、当ブログでもご紹介してきた「良い論文を書くコツ」・「ポスター発表・成功のコツ」など、研究者・学生向けの記事をChemistry Viewsなどに積極的に発表しています。ぜひ併せてご一読下さい。