現在流通している遺伝子組換え(genetically engineered = GE)食品は、大豆やとうもろこしなど、消費者が直接口にするのではなく加工や家畜の飼料としての利用を前提にしたものが主流です。しかし近年になって、果物や米、さらに養殖サーモンなど、これまでにない幅広い種類のGE食品の開発が進んでいます。こういったGE食品に対する消費者の抵抗感に、食品の種類による差があるかどうかを調べた調査結果が、Biotechnology Journal誌で報告されました。
- 論文 ⇒ Lusk, J. L., McFadden, B. R. and Rickard, B. J. (2014), Which biotech foods are most acceptable to the public?. Biotechnology Journal. doi: 10.1002/biot.201400561 (無料公開中)
この調査は、オクラホマ州立大学などの研究グループが米国の消費者1,012人を対象に行いました。調査では、食品の種類や加工の度合いが異なる6つの食品(リンゴ、アップルジュース、軸つきとうもろこし、コーンチップ、牛ステーキ、ビーフホットドッグ)それぞれに対して、GE食品と特定しない場合とした場合とに分けて、好みの度合いを点数化してもらいました。その結果、同じ食品であれば総じてGEの方が低い評価となりましたが、GEの評価が特に大きく下がったのは、リンゴやとうもろこしよりも牛肉、また加工食品よりも未加工の状態で食べる場合で、そういった食品でGEに対する消費者の抵抗感が特に強いことを示唆しました。
またこの調査では、GE食品を生産する目的として「米国の穀物生産を守る」「栄養を改善する」「農家の生産性を高める」などを挙げ、それぞれに対して支持する度合いを尋ねました。その結果、「米国の穀物生産を守る」が最も高い支持を集めたほか、低価格・栄養改善など消費者の利益に直接つながる項目が上位を占めました。一方、「農家が除草剤を使用できるようにする」など利益が農家に向かう項目については支持がやや低くなりました。
今後開発されるGE食品は、より未加工に近い状態で消費されるものが多くを占めると考えられ、今回の報告の著者らは、消費者に受容されるためには消費者教育が一層重要になるだろうとしています。一方、GE食品生産の目的として「米国の穀物生産を守る」が「低価格」や「栄養の改善」を上回って支持されたのは著者らに意外だったようで、食品の生産地についての消費者の強い関心を示す結果といえそうです。