水電解によって水素ガスを製造する水素発生反応(HER)は、太陽光発電で生まれた電力を化学エネルギーに変えて貯蔵する手段として、重要な役割が期待されています。水素発生反応で電極触媒に使われる材料としては白金が最良とされていますが、高価で希少な白金に代わる材料の探索が大きな課題となっています。
米スタンフォード大学のThomas F. Jaramillo教授らは、モリブデンホスフィド(りん化モリブデン)に硫黄を導入したモリブデンホスホスルフィド (molybdenum phosphosulfide) が、元のモリブデンホスフィドと比べて触媒活性・酸溶液に対する安定性とも著しく改善され、貴金属を用いない電極触媒としては最高水準の活性と耐久性を示すことを発見しました。同教授らは、今後の改良によって白金にさらに迫る触媒性能の実現をめざしています。この成果を報告する論文は Angewandte Chemie International Edition (ACIE) に掲載され、同誌の注目論文 Hot Paper に選ばれました。
スタンフォード大の発表資料によると、今回の発見には、石油精製に用いられる脱硫触媒に硫黄が入り込むと触媒活性が高まるという知識がヒントになったそうで、同教授は「全く異なる分野の技術をこのように関連付けるのはエキサイティングだ」と語っています。
- 論文 ⇒ Kibsgaard, J. and Jaramillo, T. F. (2014), Molybdenum Phosphosulfide: An Active, Acid-Stable, Earth-Abundant Catalyst for the Hydrogen Evolution Reaction. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201408222 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
■ ACIEでは、急速な展開によって注目を集めている分野における研究で、編集委員が特に重要性を認めた論文をHot Paperとしています。
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