<論文紹介> 酵素バイオ電池を組み込んだイオントフォレシス用パッチ / 東北大・西澤 松彦教授らが開発、薬物の皮膚吸収を促進

battery薬物を皮膚から体内に吸収させる投与方法(経皮吸収)の例としては、禁煙者が使うニコチンパッチがおなじみです。しかし薬物が自然に浸透するのを待つだけでは効率が悪いため、皮膚への吸収を積極的に促進する方法の開発が進められています。その一つが、電気泳動の原理を用い、弱い電流によってイオン性薬物の浸透を促す「イオントフォレシス」という方法です。

イオントフォレシスは、使用中電流を供給し続ける必要があります。これまでの装置は、皮膚につけるパッチに硬い小型電池を組み込んだり、外部の電源と接続する仕組みになっていましたが、利用者にとっては煩わしく、また感電などのリスクを伴うこともあります。東北大学大学院工学研究科の西澤 松彦教授らは、酵素の働きで発電する燃料電池「酵素バイオ電池」を組み込んで、すべて有機材料だけで構成されたイオントフォレシス用パッチの開発に初めて成功し、その成果をAdvanced Healthcare Materials誌で報告しました。

このパッチに使われた酵素バイオ電池は、フルクトース(果糖)を燃料として6時間以上にわたって給電が可能で、試作品による実験では、化粧品の美白成分に使われるアスコルビルグルコシドや蛍光色素ローダミンBの皮膚からの浸透を助ける効果が確認されました。今後はさらなる改良とともに、体液から燃料を得て発電するといった発展が期待されます。

Advanced Healthcare Materials

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