<論文紹介> 生体分子におけるホモキラリティーの起源 / 彗星探査機ロゼッタは解明の手がかりをつかめるか (ACIE Minireview)

comet今月、ヨーロッパの彗星探査機ロゼッタの着陸機フィラエは彗星の核の表面への着陸に成功し、人類初めての快挙として大きなニュースとなりました。この着陸ミッションは、化学の重要概念「キラリティー」と深くかかわる目的をもっています。

地球上の生体内のアミノ酸はL体、糖はD体と呼ばれる鏡像異性体に大きく偏っていることが知られています。生体分子で鏡像対称性が破れてこのような偏り(ホモキラリティー)が生じた原因は、長年の研究にもかかわらず未解決のままとなっています。フィラエに取り付けられた彗星表面の構成物質を採取・分析するための装置 COSAC (The COmetary SAmpling and Composition)は、有機分子の鏡像異性体の構成比を調べる機能を備えています。今回のミッションに関わる科学者らは、フィラエから得られた彗星上の有機分子のデータをこれまでに隕石などから得られたデータと照合することで、地球上の生命におけるホモキラリティーの起源を解明するための手がかりが得られると期待しています。

Angewandte Chemie International Edition自身もロゼッタのミッションに関わった経験をもつ仏ニース・ソフィア・アンティポリス大学のUwe J. Meierhenrich教授らは、この主題についてのタイムリーな総説(Minireview)をAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で発表しました。この総説で同教授らは、隕石や星間氷中の有機分子に見られる鏡像異性体の偏りについてのこれまでの研究を整理するとともに、生体分子にホモキラリティーが生じた原因についての主な学説を検討、併せて今回のミッションの位置づけを行っています。ロゼッタの探査ミッションに関心のある方に、その科学的背景の理解を助ける文献としておすすめします。


Comets And Their Origin
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