アミド結合をもつアミド化合物は、創薬などの分野で非常に有用です。アミド結合を人工的に構築する方法としては、カルボン酸とアミンを原料に、大量の試薬を縮合剤として用いるのが一般的ですが、不要な副生成物が多く生成する問題があります。副生成物の生成を抑えて環境にやさしい反応を実現するため、アルコールとアミンから触媒的酸化反応によってアミド結合を形成する試みが盛んに行われています。
マイクロ波照射は有機合成反応を促進するのに有効なテクニックとして広く利用されていますが、これまでアルコールの酸化によるアミド結合生成反応をマイクロ波照射で促進した報告例はありませんでした。仏モンペリエ大学のFrédéric Lamaty教授らのグループは、無害で安価な鉄触媒とともにカフェインを安定化配位子として用いることで、アルコールとアミン塩酸塩を原料とするベンズアミド生成反応をマイクロ波照射で促進できることを発見し、European Journal of Organic Chemistry (Eur JOC) で報告しました。
- 論文 Bantreil, X., Navals, P., Martinez, J. and Lamaty, F. (2014), Iron/Caffeine as a Catalytic System for Microwave-Promoted Benzamide Formation. Eur. J. Org. Chem.. doi: 10.1002/ejoc.201403173 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
このマイクロ波反応は30-45分間という短時間で進行し、最高収率は84%、TOF(ターンオーバー頻度)は1時間当たり最大33.6でした。有用性の高いアミド化合物を、効率的かつ環境にやさしい方法で生成できる反応として注目されます。
なお同グループは、純粋なカフェインのほかにコーヒー豆や茶葉からの抽出物でも反応を試しましたが、収率は58%以下に留まりました。同グループでは、カフェイン以外の成分が反応を妨げるのではないかと考えています。