金属元素やその酸化物でできた通常の磁石とは異なる、個々の分子によって構成された磁石「分子性磁性体」が、いま盛んに研究されています。その際、一次元(1D・鎖状)の磁性体や二次元(2D・層状)の磁性体を組み合わせて三次元(3D)構造の磁性体を構築するのは、部品にあたる1D・2D磁性体間の相互作用を制御するのが非常に困難なため実現が難しく、研究上の大きな課題となってきました。
東北大学金属材料研究所の宮坂 等教授らは、1D磁性体の柱(ピラー)で2D磁性体の層(レイヤー)の間をつないだ「ピラードレイヤー構造」の3D磁性体の開発に成功しました。この磁性体は、相転移温度が常圧下で82K(–191 °C)と、分子性磁性体としてはかなり高い温度で磁性を発現することが確認されました。また相転移温度は加圧によって上昇し、12.5 kbarの気圧下では107K(–166 °C)まで上がりました。3D構造の分子性磁性体構築のための新しい発想に基づくアプローチとして、今後の発展が期待されます。
この成果はAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告され、同誌の注目論文VIP (Very Important Paper) に選ばれるとともに、化学ニュースサイト Chemistry Viewsで紹介されました。
- 論文 ⇒ Fukunaga, H. and Miyasaka, H. (2014), Magnet Design by Integration of Layer and Chain Magnetic Systems in a π-Stacked Pillared Layer Framework. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201410057 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- Chemistry Viewsの紹介記事 Magnet Made of Paddlewheels and Pillars (December 1, 2014, Chemistry Views)
■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
⇒ 最近VIPに選ばれた論文