Asian Journal of Organic Chemistry (Asian JOC)のエディター Richard Threlfall氏(右写真)による連載記事 “Tips for Your Poster” (ポスター発表・成功のコツ)から、ポスターセッションでの「話し方」を取り上げた最近の記事3回分をまとめてご紹介します。これらの記事は、化学ニュースサイトChemistry Viewsで好評連載中です。原文はさらに詳しく書かれていますので、併せてお読み下さい。
1. 沈黙を破って会話を始める
(原文: Talking in Poster Sessions: Breaking the Ice (1))
足を止めて自分のポスターを見てくれている人がいたら、質問が来るまで黙って待つ必要はありません。ポスターの最も重要な部分を指して「ここが一番面白いところです、なぜかというと…」と自分から口火を切るのもいいし、あるいは「こんにちは」とか「ご所属はどちらですか」とか気軽に話しかけても構いません。
発表の要旨を1枚にまとめたハンドアウト(配布資料)を用意しておいて「よろしければご覧下さい」と渡すのもいいでしょう。また、同じ学会でその人の発表を聞いた後なら、「先ほどはとても興味深い発表を聞かせていただきました」と声をかけると、スムーズに会話を始められます。
2. 説明時に留意するポイント
(原文: Talking in Poster Sessions: After the Icebreaker (2))
会話が始まったら、次に発表の本題に移ります。知らない相手なら最初に「ご専門は何ですか」と聞くと、背景的な説明がどの程度必要か、直ちに詳細な説明に入っていいかが分かります。さまざまな専門分野の参加者がいる大きな学会の場合には、特に有効です。
どの人にも同じ話を、台本通りに繰り返すのはよくありません。それぞれの聞き手の関心がどこにあるかを知り、そこに焦点を合わせるようにしましょう。
説明中に別の人が来たら、いま話している相手に断ったうえで「少々お待ち下さい」と声をかけるのがいいでしょう。前の人が立ち去って初めて、次の人への説明に移りましょう。
3. 質問への対処法
(原文: Talking in Poster Sessions: Answering Questions (3))
ポスターセッションは口頭試問とは違うので、聴衆からの質問に答られないなら率直にその通り言って構いません。
聴衆には知識・経験の豊富な研究者も多いので、相手から学ぶことも心がけましょう。例えば、この反応でこれこれの触媒は試したかといったテクニカルな質問をする人は、自分でも何らかの経験があるはずなので、聞いてみるといいでしょう。また、専門が異なるのに興味を持ってくれた人と話すのも、自分の研究を別の視点から見るという意味で役に立ちます。
聴衆の中には、発表内容に対して攻撃的・批判的な反応を示す人もいるかもしれません。まずは発表者自身の仮説とそれを支える証拠を冷静に話すとともに、延々と続く攻撃にそのまま応じるのではなく、相手の論点を順を追って話してもらうように頼みましょう。論点を細かく分割して見ていくことで、どの部分が正しいか間違っているかが見えやすくなります。
- 過去記事も当ブログでご紹介しています: 第1回「発表要旨の書き方」 / 第2回「ポスターの構想を練る」 / 第3回「デザイン」 / 第4回「研究成果と自分自身をアピールしよう」
- 過去記事の原文をまとめて読む