カナダ・トロント大学のEdward H. Sargent教授らのグループは、半導体ナノ結晶を集光に用いる「コロイド量子ドット太陽電池」を簡便なスプレーコート法で作製する方法を開発、Advanced Materials誌で報告しました。
「コロイド量子ドット太陽電池」は、広範囲の波長の光を吸収できるなどの利点をもち、高効率の太陽電池の実現につながることが期待され活発な研究対象となっています。しかし、ナノ結晶を基板に塗布するためにこれまで採用されてきたスピンコート法などでは、切り離した基板を1点ずつしか処理できないため、実用化に向けて生産をスケールアップするには効率が悪いことが課題でした。
Sargent教授らのグループは、大面積の基板に対して連続的にコーティングを行う「ロール・ツー・ロール方式」での作製をめざして取り組んだ結果、溶媒中に分散させたコロイド量子ドットをスプレーで噴霧する「スプレーコート法」によって、変換効率が最高で8.1%のコロイド量子ドット太陽電池を実現することに成功しました。スプレーコート法では、簡単な設備で常温・常圧下でコーティングを行えるため、効率的な大量生産につながることが期待されます。
トロント大の発表資料によると同グループは、鉄鋼炉の冷却に用いるスプレーノズルや美術用品店で売っているエアーブラシといったあり合わせの材料を集めて今回の製造装置を組み立てたとのことです。スプレーコート法でコロイド量子ドットを塗布したフィルムを家や自動車の屋根、飛行機の翼などに貼り付ければ、太陽光発電のための集光を行うことができます。筆頭著者のIllan Kramer博士は、映画「ゴーストバスターズ」に出てくる幽霊退治の装置のようなものを背負った2人の技師が家に来て、屋根にスプレーをかけて太陽電池化できるようになることを夢見ていると語っています。
- 論文 ⇒ Kramer, I. J., Minor, J. C., Moreno-Bautista, G., Rollny, L., Kanjanaboos, P., Kopilovic, D., Thon, S. M., Carey, G. H., Chou, K. W., Zhitomirsky, D., Amassian, A. and Sargent, E. H. (2014), Efficient Spray-Coated Colloidal Quantum Dot Solar Cells. Adv. Mater.. doi: 10.1002/adma.201403281 (本文を読むにはアクセス権が必要です)