科学論文における剽窃(plagiarism)は、日本では論文の「コピペ」問題として広く知られるようになりましたが、世界的にも近年増加の傾向にあり、科学界・出版界で深刻な懸念をもたれています。
Software Testing, Verification and Reliability (STVR) 誌の共同編集長Jeff Offutt教授(米ジョージ・メイソン大学)は、同誌のEditorialで過去にも剽窃問題を論じましたが、最新号(2015年1月号)でも再びこの問題を取り上げています。
- 記事を読む Offutt J. (2014), Editorial: Plagiarism Is For Losers, Softw. Test. Verif. Reliab., 25, 1–3, doi: 10.1002/stvr.1565
「剽窃」の辞書的な定義は明確で、「他人の著作物や着想を自分の手柄にすること」です。今回の記事でOffutt教授は、編集長としての経験に基づき、剽窃を8つのタイプに分類しています。論文のほぼ全体を丸ごとコピペしたり、主要な結果を盗用するようなあからさまな剽窃は論外ですが、次のようなタイプの剽窃は、悪意のない研究者でもつい犯してしまうかもしれません。
- Copying unpublished work(未発表の著作のコピー) ・・・ 内輪のレポートや口頭発表、個人的な会話などから文章をコピーしたり結果を流用する。査読に回ってきてリジェクトした論文からの盗用もこれに含まれ、その場合は査読者としての倫理違反も加わります。
- Copying auxiliary text(補助的な文章のコピー) ・・・ Introductionに書く先行研究や研究の背景など、主要な結果以外の部分で他の論文から文章を盗用する。
- Copying figures(図表のコピー) ・・・ 他の論文や書籍から、出典を適切に示さずfigureを流用する。
- Improper quoting(不備のある引用) ・・・ 引用箇所に引用符を付けないなど、作法に不備がある。
論文著者が意図しない剽窃を避けるための心得として、同教授は以下のようなポイントを挙げています。
- 剽窃について正しく理解する ・・・ 今回の記事のほか、参考になる解説記事がネット上で公開されています。
- 自分のものでない着想には出典を示す
- 使いたい文章はリライトする ・・・ たとえ下手な英語でも自分の言葉で書く方が、上手い文章を盗用するよりもはるかに勝っています。
- 他者の著作から借りたFigureは、自分で描き直したり変更を加える場合でも引用元を示す
- 他者による未発表の着想を自分の論文に使うときは、必ず本人の明確な許可を取る。そうでなければ一切使わない
ネイティブスピーカーの上手い表現を目にすると思わずコピペしたくなるのは無理からぬ感情ですが、だからこそ3つ目の項目は心に留めておきたいですね。
原文ではこれらの内容をさらに詳しく解説しており、またネット上の参考記事も紹介していますので、ぜひご一読下さい。