<論文紹介> トコジラミ(南京虫)の集合フェロモンの同定に成功 / 安価な発見・駆除手段の実現に期待 (ACIE)

古い小説などには、安ホテルや下宿で寝ている間に南京虫に刺された、といった記述がしばしば出てきます。この南京虫という別名でも知られるのは、吸血性の害虫 トコジラミ (bed bug)です。トコジラミは、20世紀中に多くの国で絶滅寸前まで激減しましたが、今世紀に入って世界的に再び勢力を盛り返し、米国でもその被害にあって病院に駆け込む患者が急増しているそうです。

家の中に潜むトコジラミを発見するには高価な装置が必要なため、特に被害を受けやすい低所得者の家庭で手軽に使える安価な発見・駆除手段が求められていました。トコジラミをおびき寄せる「集合フェロモン」の探索も進められていましたが、集合フェロモンがどのような化合物から構成されているのかはこれまで明らかになっていませんでした。

サイモンフレーザー大学(カナダ)のGerhard Gries教授らのグループはこのほど、トコジラミの集合フェロモンの成分となる6種類の化合物の同定に成功し、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告しました。それらの化合物のうち、5種類の揮発性化合物は離れたところからトコジラミを引き寄せ、残る1種類の非揮発性化合物(ヒスタミン)は接触したトコジラミを捕獲する作用をもつことが分かりました。実験では、これらの化合物を成分とする合成フェロモンを仕掛けた罠がトコジラミを捕らえる高い効果をもち、また罠の中に仕込んだヒスタミンに接触したトコジラミは、粘着テープなどを使わなくても罠の中に留まり続けることが確かめられました。安価で効果的なトコジラミ駆除方法の実現につながることが期待されます。

Angewandte Chemie International Edition

  •  論文  ⇒ Gries, R., Britton, R., Holmes, M., Zhai, H., Draper, J. and Gries, G. (2014), Bed Bug Aggregation Pheromone Finally Identified. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201409890 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
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