マグネシウム・亜鉛・ホウ素などの有機金属化合物を用いたクロスカップリング反応が開発される中で、反応性が高く不安定な有機リチウム化合物は、クロスカップリングに適さないと長年考えられてきました。しかし2013年になって、フローニンゲン大学(オランダ)のB. L. Feringa教授のグループが、有機リチウム化合物を用いたクロスカップリング反応の開発に初めて成功しました。(Chem ASAPさんによる解説記事) Feringa教授らはその後も同様の手法で新しい反応を次々に報告し続け、クロスカップリング反応に新たな可能性を開く成果として注目を集めています。有機リチウム化合物を用いる利点としては、クロスカップリング反応を穏和な条件で迅速に進行させる、また不要な副生成物が出にくい、他の有機金属に比べて安価で入手しやすいといった点が挙げられます。
英ヨーク大学のPeter O’Brien教授らは、このほどChemCatChem誌で発表した2ページ強の簡潔な総説(Highlight)で、Feringa教授らの成果のポイントと今後の課題を解説しています。過去わずか2年間で急速に進展したこのホットな研究領域を効率よく理解できる文献としておすすめします。
- 論文 ⇒ Firth, J. D. and O’Brien, P. (2015), Cross-Coupling Knows No Limits: Assessing the Synthetic Potential of the Palladium-Catalysed Cross-Coupling of Organolithiums. ChemCatChem. doi: 10.1002/cctc.201402886 (本文を読むにはアクセス権が必要です)