ケンブリッジ大学のスティーブン・レイ (Steven V. Ley) 教授といえば、天然物全合成の分野で数々の偉業を達成した有機化学者であると同時に、「フロー・ケミストリー」をはじめとする新しい合成手法・技術の開発においてもパイオニア的な存在として知られています。そのレイ教授のグループがこのほどAngewandte Chemie International Edition (ACIE) に発表した総説は、多大な時間とマンパワーを要しがちな有機合成の効率化や廃棄物の削減をもたらすと期待されるさまざまな新テクノロジーについて解説するもので、公開直後から注目を集めています。
- 論文 ⇒ Ley, S. V., Fitzpatrick, D. E., Ingham, Richard. J. and Myers, R. M. (2015), Organic Synthesis: March of the Machines. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201410744 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
この総説でレイ教授らは、自らのグループによる成果を交えながら、近年開発された有機合成のためのテクノロジーを次のように分けて紹介しています。
- Computation and Visualization (計算ツールによる反応の予測)
- Downstream Processing (インライン蒸着装置、液液分離器、SMB式クロマトグラフィー、インライン濾過器など)
- Analytical Tools (赤外分光法、NMRなど)
- Advanced Computer Technology (マシンビジョン、反応最適化ツール、反応装置制御システムなど)
レイ教授はこの総説を、「人は機械よりも常に重要だが、私たちは次第に『機械の方がうまくできることを自分でするのは馬鹿げている』と考えるようになってきている」という一文で締めくくっています。この総説から、ご自分の研究室の有機合成研究を効率化してくれるテクノロジーが見つかるかもしれません。