2011年に創刊されたオープンアクセスの化学誌 ChemistryOpen は、Chemistry — A European Journalなどと同様に、欧州各国化学会の連合体 ChemPubSoc Europe とWiley-VCHが共同出版しています。最近は多種多様なオープンアクセス誌が発行されていますが、学会が化学総合誌をオープンアクセスで創刊したのは ChemistryOpen が初めてでした。
このChemistryOpenで昨日(2月9日)にオンライン公開されたEditorialに、興味深い図表が載っていました。下の棒グラフが同誌の各号の出版論文数(隔月刊)、折れ線が各月の投稿論文数を示します。
- 記事を読む Ortúzar, N. (2015), Open-Access Chemistry with Impact. ChemistryOpen. doi: 10.1002/open.201402150 (オープンアクセス)
一目で分かるのは、昨年2014年の8月から論文投稿が急増していることです。その理由は明らかで、同年7月末に発表された2013年インパクトファクター(IF)で、同誌が初めてのIF 2.938を獲得したことにあります。論文誌のインパクト指標であるIFは、研究者個人の業績評価に誤用されることから近年しばしば批判の的になっていますが、論文著者が投稿先を選ぶ際に判断を左右する大きな影響力をもっていることが、このグラフから読み取れます。特にChemistryOpenのように、創刊直後で判断材料の少ない論文誌では、その影響が特に顕著でしょう。
投稿論文が増えると、査読や出版に要する日数が延びることが懸念されますが、このEditorialを執筆した同誌Deputy EditorのDr. Natalia Ortúzarは、採否の迅速な決定(受理から16-22日)とスムーズな出版(最終稿受理から3-4週間でオンライン公開)を今後も継続するとしています。また2015年からは新たに総説の掲載も開始し、総説の主題についての提案を編集部で受け付けています。今後もChemistryOpenにご注目いただくとともに、投稿先として候補にお加え下さい。