四置換オレフィンは天然物・医薬品・材料などの骨格として重要で、有機合成の出発原料としても有用です。しかし四置換オレフィンの合成には困難が伴い、従来の合成法には、高価で有毒な遷移金属触媒を用いたり多段階を要するといった難点がありました。
このほど独アーヘン工科大学のMeike Niggemann教授らは、カルシウム・ルイス酸触媒を用いてアルキンをカルボアリール化することにより、四置換オレフィンをワンステップ合成する手法を開発しました。遷移金属を用いないアルキンのカルボアリール化反応としては初めての報告になります。この反応は穏和な条件下で進行し、天然に豊富に存在し環境に無害なカルシウムを触媒に用い、また広く市販されているアルコール類をアルキル化試薬として利用できるといった利点を備えています。
今後の発展・応用が期待されるこの成果を報告した論文はChemistry - A European Journal誌の電子版で先行公開され、同誌の注目論文Hot Paperに選ばれるとともに、近く発行される掲載号の表紙(右の画像)への採用が決まりました。
- 論文 ⇒ Fu, L. and Niggemann, M. (2015), Calcium-Catalyzed Carboarylation of Alkynes. Chem. Eur. J.. doi: 10.1002/chem.201406503 (2015年5月31日まで無料公開)
- Cover Profile (著者自身による解説) Calcium-Catalyzed Carboarylation of Alkynes (本文を読むにはアクセス権が必要です)
- 化学ニュースサイトChemistry Viewsの紹介記事 Ca Catalyst for Carboarylation (March 17, 2015, Chemistry Views)
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