創薬の過程では、膨大な種類の分子を対象にスクリーニングを行って、目的とする候補化合物を探索する必要があります。その際に障害となることのひとつは、水溶液中で有機分子が集合し、可溶性のモノマーとオリゴマー、難溶性の集合体という3つの相が混在した状態で均衡してしまうことです。オリゴマーと集合体の形成は分子の活性に影響を与え、リード化合物の特定を妨げます。
東京大学大学院薬学系研究科・嶋田 一夫教授、横浜市立大学大学院生命医科学研究科・高橋 栄夫教授らによる研究グループは、溶液中に混在する可溶性のモノマーとオリゴマーの比率が溶液NMRを用いて測定できることを示すとともに、その手法によって、非界面活性型スルホベタイン (non-detergent sulfobetaine = NDSB) がさまざまな有機分子の集合を効果的に阻害することを確認し、ChemMedChem誌で報告しました。この発見によって、オリゴマーや集合体を形成しやすい分子を創薬候補とする上での障害が軽減され、候補化合物の探索精度の向上につながることが期待されます。
- 論文 ⇒ Mizukoshi, Y., Takeuchi, K., Arutaki, M., Takizawa, T., Hanzawa, H., Takahashi, H. and Shimada, I. (2015), Suppression of Problematic Compound Oligomerization by Cosolubilization of Nondetergent Sulfobetaines. ChemMedChem, 10: 736–741. doi: 10.1002/cmdc.201500057 (オープンアクセス)