<論文紹介> UV照射による金属フタロシアニンナノ結晶の直接合成法 / 東北大・藪 浩准教授らが報告 (ChemNanoMat)

Metal phthalocyanines有機色素フタロシアニンと金属元素の錯体である金属フタロシアニンは、すぐれた光学特性を備えることから、染料・顔料として、さらに近年は有機系太陽電池の増感色素など光機能性材料として応用が広がっています。また金属フタロシアニンは、極小サイズのナノ結晶を作製することで光学材料・電子材料としての特性を改善できることが最近判明し、さらに注目を集めるようになっています。

金属フタロシアニンのナノ結晶は合成時に凝集が起こりやすく、結晶成長を制御してナノサイズに留めるのが困難です。そのため従来は、マイクロないしミリメートル単位の大きさの金属フタロシアニン集合体を熱分解などで微粒子化する作製法が用いられてきましたが、微粒子化のための余分な工程を要しない直接合成法の開発が求められていました。

東北大学多元物質科学研究所・藪 浩准教授らのグループは、メタノール中の前駆体フタロニトリルにUV照射することによって簡便に金属フタロシアニンを直接合成する方法を発見しました。実験では、この方法で平均直径が約172 nmの銅フタロシアニンナノ結晶を合成することに成功しました。このナノ結晶の分散水溶液は500~800 nmの波長の光を強く吸収し、透明で鮮やかな青色を示しました。

同じ方法は亜鉛フタロシアニンにも適用でき、平均直径456 nmのナノ結晶合成に成功しました。銅・亜鉛以外の幅広い金属フタロシアニンにも広く適用が期待される有望なナノ結晶合成法となりそうです。

この成果を報告した論文は、ChemNanoMat誌に掲載されるとともに、化学ニュースサイトChemistry Viewsで注目論文として紹介されました。

ChemNanoMat

ChemNanoMat誌は、京都大学大学院工学研究科・北川進教授(物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)拠点長)ら3人の世界的な研究者を共同編集委員長に迎えて2015年に創刊された新しいジャーナルで、ナノ材料の化学とその応用に関する研究を対象としています。

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