アクセプト率が高く、引用されやすい論文タイトルの付け方とは? 生態学誌への投稿論文6千報の分析で分かったこと

Unknown Trend皆さんは論文のタイトルを決めるとき、どんな工夫を心がけていますか? 論文執筆のガイド書などでは、簡潔に内容を伝えるタイトルがよいとされることが多いですが、実際に出版される論文には長大なタイトルもあり、また読者へのインパクトを狙う凝ったタイトルもあり多種多様です。論文のタイトルはエディターや査読者、また読者が真っ先に目にするものなので、効果的なタイトルを付けることによってアクセプトされる確率を高めたり、出版後の引用の機会を増やしたいと考える人は多いでしょう。

論文のタイトルを分析した研究は多くあり、それらによると、最近はサブタイトルつきの論文や長いタイトルの論文が増える傾向にあるようです。また疑問文の形のタイトルやユーモアを交えたタイトルも増えていて、著者が何とかして読者の目を引き付けようと努力している様子がうかがえます。しかしそういったタイトルの付け方がジャーナルへの採択や引用回数に与える影響を検証した研究は少なく、どのようなタイトルが効果的なのかはよく分かっていません。

そうした中で、英国生態学会の公式誌 Functional Ecology でExecutive Editorを務めるCharles W. Fox氏らは、同誌に2004~2013年の十年間に投稿された6千報あまりの原著論文のタイトルを分析し、エディターと査読者による採否の判断や出版後の引用状況との関係を調べました。Functional Ecology誌は、2013年インパクトファクターは4.857で生態学分野中19位にランクされる、同分野の有力誌のひとつです。その結果がこのほど、オープンアクセス誌 Ecology and Evolutionで報告されました。

Ecology and Evolution

Fox氏らによると、論文タイトルのさまざまな特徴のうち、ジャーナルへの採否と出版後の引用状況を最も大きく左右する要因は、研究対象とする特定の生物の種類(種・属)をタイトルに含むかどうかでした。すなわち、特定の生物種をタイトルに含む論文はエディターによるリジェクトを受けやすく、また引用されにくいという結果が得られました。Fox氏らとは別の研究によると、医学論文でも同じ傾向が見られ、具体的な地域や住民層をタイトルで特定している論文は引用回数が少ない傾向にあるそうです。

また今回の分析では、そのように特定の生物種をタイトルに含む論文の数自体が、対象期間を通じて顕著に減っていることも分かりました。論文著者は、高インパクト誌でアクセプトされるために幅広い読者層にアピールしようとして、タイトルでは論文が取り上げる生物種よりも普遍的な概念のほうを強調する傾向にあると考えられます。

これ以外の要因で、採否・引用の両方に対して目立った影響が認められたものはありませんでした。サブタイトルを含む論文はそうでない論文よりもアクセプトされる率が高く、一方タイトルが短かすぎる(語数が少ない)論文と逆に長すぎる論文の両方ともリジェクトされやすい傾向にあります。しかしいずれも、出版後の引用回数への影響は見られませんでした。また疑問文形式のタイトル、ユーモアを含むタイトルの論文とも、他の論文と比べて採否・引用に違いはありませんでした。

今回の分析は生態学の論文に限ったものですが、論文が広範な読者層にインパクトをもつことを強調する狙いで、特定の研究対象の代わりに普遍性の高い概念を前面に出すことは、他の分野にも見られる傾向かもしれません。皆さんの分野ではどうですか?

カテゴリー: 一般 タグ: パーマリンク