科学研究の成果を論文として公表する上で、査読 (peer review) は欠かすことのできない重要なプロセスです。最近の調査によると、研究者の84%は査読がなければ学術コミュニケーションからコントロールが失われると考え、また90%が査読を通じて自分の論文の質が向上したと回答しています。(右図・クリックすると拡大)
Wileyはこのほど、論文査読者のための情報リソースを集めたまとめページを公開しました。英語ページではありますが、箇条書きを中心に分かりやすく書かれていますので、多くの方にご利用をおすすめします。
“What is Peer Review?”, The Peer Review Process, “Why Become a Reviewer?” といった「基礎編」にあたる項目は、これから論文執筆や査読に携わろうという学生・院生の方に役立つはずです。
一方、既に査読に関わっている方、特に査読者としての経験の浅い方には、「実践編」としてGeneral and Ethical Guidelines と How to Perform a Peer Reviewが参考になるでしょう。前者では、自分に来た査読依頼を同じ研究室の若手に任せたい場合はどうすべきか、また「利益相反」や匿名性についての留意点などを論じています。後者はさらに具体的に、査読者が順を追って踏むべきステップ、それぞれの段階で必要なチェックポイント、採否の判断のしかた、査読レポートの書き方などを細かく解説しています。Plagiarism(剽窃・盗用)の疑いをもったときにどう行動すべきか、といった項目も参考になりそうです。
他の項目も、査読についてさらに詳しく知るためのリンク集をはじめ非常に充実しています。“Types of Peer Review”の項目では、Single blind(一重盲検 = 査読者には著者が誰か分かるが、著者には査読者が誰か分からない), Double blind(二重盲検 = 著者・査読者の双方とも相手の素性を知らされない)といった査読の代表的なタイプを取り上げ、それぞれのメリットとデメリットについて述べています。Single blindの査読に対しては、著者の権威や逆にネガティブな属性によって査読者の判断にバイアスがかかるという批判があるのに対し、Double blindでも論文を読めば著者が誰かはだいたい推測がつくので、隠す意味はないという意見があります。またSingle blind, Double blindとも、査読者が誰かを著者に教えない点は同じです。この2つのタイプが主流になっているのは、査読者が著者の反応を気にせず遠慮なく評価できるという利点が認められているためです。
査読について日本語で読める記事をお探しの方には、当ブログの過去記事 査読で悩む人は必読! 化学ジャーナル編集長が教える「論文査読・12のポイント」 がおすすめです。上の情報ページと合わせてブックマークされてはいかがでしょうか。