研究者にスパムメールを送りつける出版社の多くは「ハゲタカ出版社」 / ポーランドの研究者が、自分が受け取った約1千通のスパムメールを分析

spam最近、怪しげな出版社から届く論文投稿の勧誘メールが増えているという声が研究者から聞かれますが、皆さんはいかがでしょうか。この状況は海外も同じなようで、ポーランドの研究者Marcin Kozak氏らは、自分が出版社から受け取った約1千通のスパムメールの分析結果を論文にまとめました。このユニークな論文は、アメリカ情報科学技術協会誌 Journal of the Association for Information Science and Technology に掲載された直後から100人以上にツイートされるなど話題を呼んでいます。

Journal of the Association for Information Science and Technology

  •  論文  Kozak, M., Iefremova, O. and Hartley, J. (2015), Spamming in scholarly publishing: A case study. Journal of the Association for Information Science and Technology. doi: 10.1002/asi.23521 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

この論文の筆頭著者になっているKozak氏は、2012~13年の391日間に出版社や個別のジャーナルから受信した計1,024通のスパムメールを、共同研究者とともに分析しました。Kozak氏は4つのメールアカウントを持っていますが、そのうちスパムメールの大半が届いたのは、論文のコレスポンディングオーサーとして使っているアドレスでした。著者らは、スパムメールの送信者たちは論文に載ったアドレスを収集して使っているらしいと推測しています。

受信したスパムメール1,024通のうち、特定のジャーナルから送られたものは796通で、ジャーナルのタイトル数としては277誌でした。同じジャーナルから送られてきたスパムメールの数は最高で24通にのぼりました。これら277誌のうち、オープンアクセス(OA)誌が204誌(74%) で、ほとんどが論文出版料金(Article Processing Charge = APC)を徴収するタイプでした。その他は有料購読のジャーナルが19誌(7%)、OAと有料購読のハイブリッド誌が10誌(4%)などでした。一方、出版社から送られたスパムメールは228通、出版社数は57社で、そのうち34社(60%)がOA出版社でした。

スパムメールを送ってきたジャーナル・出版社には、所在地について正確な情報を載せていないものが目立ちましたが、判明した中ではインド・米国・ナイジェリアなどが上位を占めました。

APC収入を目当てに粗雑なジャーナルを出版する「ハゲタカ出版社」(predatory publishers) のブラックリストであるBeall’s Listとの照合を行ったところ、スパムメールの送信元のジャーナルのうち77%にあたる212誌が、また出版社の70%にあたる40社がBeall’s Listに掲載されていて、高いヒット率を示しました。

著者らは、APCによるOA出版モデルが一律に悪いわけではないが、安易な金儲けを狙う連中によってこのモデルが悪用されていると考えています。

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